座敷わらしには「種類」や「ランク」が存在する|考察レポ

もはや日本の妖怪において1、2を争うほどの知名度を誇るであろう妖怪「座敷童子(ざしきわらし)」。

名前や特徴はなんとなく知っている方も多いかと思いますが、その詳しい実像を知っている人は意外に少ない怪異ともいえる。

例えば一言に「座敷わらし」といってもそこには様々な「種類」、そして「ランク」すら存在するという。そこで今回は「座敷わらしの種類とランク」に関する考察レポートです。

実は奥が深い「座敷わらし」の世界

そもそも座敷わらしのイメージというとどうでしょう? 例えば……

  1. 見ると幸せになれる
  2. オカッパ頭で着物姿の女の子
  3. 古い旅館などに出没
  4. 家に富と繁栄をもたらすが去るとその家が没落する
  5. 遊んでいる人数がいつの間にか一人増えてる

……などが有名でしょうか。

実はこれらは座敷わらしの特徴を示すほんの一側面に過ぎません。

おそらく柳田國男の「遠野物語」がそのイメージのベースになってるのではないかと思いますが、座敷わらしそのものの起源については、東北地方の民間伝承との結びつきが強いようで、なかなかに永い歴史をもつ妖怪といえます。

姿形のバリエーションが多い

地域ごとに様々な話が存在する民間伝承との結びつきからか、とにかく姿形にバリエーションが多いのも座敷わらしの特徴です。最近は「おかっぱ黒髪の小学生くらいの着物姿の女の子」が一番多く見られるイメージのパターンかと思いますが、そもそも「男の子」の場合もあります。「座敷女児」ではなく「童子」なのでまあ間違いではありません。

見た目の年齢にも実はかなり幅があり、赤ん坊のような姿~もはや成人済みと思われるタイプまで存在します。また「姿が見えない」「姿は曖昧でぼんやりしている」というパターンもあります。

座敷童子といえば「住む家に富をもたらすが去るとその家が没落する」という伝承が有名ですが、「白い座敷童子は吉兆、赤い座敷童子は凶兆」という言い伝えもあったりします。

また地域によっては、幸運の象徴である座敷童子を家に呼び込むために、新築の家の床下に予め「金の玉」を埋めておくという風習や、座敷わらしに家にいてもらうため、おもちゃや小豆飯をお供えすることもあるそうです。

実は「種類」や「ランク」が存在する

一言で「座敷わらし」といっても、実際は「家に住み着く子供の怪異」の総称という意味合いが強く、事実、住む場所や現れる場所によって「種類」はおろか「ランク」すら存在するとされています。

例えば、主に土間や台所などに現れるものは「ノタバリコ」「ウスツキワラシ」と呼ばれランクは低めとのこと。これらは気味の悪い音を立てたり、客人を脅かしたりなどあまりありがたい存在とはいえないようです。

それに対して一番ランクが高いとされる座敷わらしは「チョウピラコ」と呼ばれるタイプで、奥座敷に住み、色白で美しい姿をしているとのこと。最近の座敷わらしのイメージとしては、この子が一番近いイメージかもしれません。

また蔵に住むタイプで「クラボッコ」と呼ばれる者(座敷わらしではなく独立した妖怪との説もある)、妖怪「枕返し」も実は座敷わらしの一種、中には「家に住み着いた河童が座敷童子になる」といった奇想天外な説もあります。

元来、人と共にあった怪異「座敷わらし」

最近、座敷わらしが出没する場所といえば主に「老舗の旅館」が定番です。しかし本来、座敷わらしは「民家に住み着く怪異」でした。その性質から木造の家、特に奥座敷や床の間のあるような民家を好みますが、最近ではそのような民家はすっかり減ってしまいました。

元々、人々の生活のすぐ隣にいた身近な怪異、だからこ民間伝承とも結びつき、多くのバリエーションが生まれたのかもしれません。

最近の座敷わらしのイメージが「おかっぱ黒髪の小学生くらいの着物姿の女の子」に定着してきた理由に、座敷童子という怪異が、私達の生活から乖離した「伝承の中だけの存在」となってしまったことがあるのかもしれません。