人類最古の英雄王ギルガメッシュの実像にツッコミを入れていく|考察レポ

人気のFateシリーズでも活躍する英雄王「ギルガメッシュ」。その他の作品にも多く登場する伝説上の超有名人ですが、その実像はというと意外と知らない。

そこで今回は「ギルガメッシュ」とその活躍を描いた人類最古の英雄譚「ギルガメシュ叙事詩」を中心にツッコミ考察していきたいと思います。


ギルガメッシュとはどんなひと?

  • 古代メソポタミア、シュメール初期王朝時代の人物。古代都市「ウルク」の第1王朝第5代の王。その在位期間は126年
  • ウルク第1王朝期第3代の王「ルガルバンダ」を父に、シュメールの女神ニンスンを母に持つ「半神半人」
  • シュメールの神々の祝福を受け、容姿端麗にして豪腕。15kgの黄金の短剣、90kgの斧、200kg以上の剣、時には300kgもの重武装で戦いに赴くほどの豪傑ぶり
  • その活躍を描いた英雄譚「ギルガメシュ叙事詩」が大変有名
  • その「実在」の可能性がある最古の伝説上の人物

ちょっと待てぇ在位期間が長すぎなんじゃ

早くもツッコミ所にこと欠かない、さすが英雄王。「生存期間」どころか「在位」期間で軽く100年オーバーしてきたよ、このひと

現代人の寿命でも確か最長122才が限界だったような?
まあ、半分「神様」なのでそのへんは大分融通が効くのかもしれません。こんな人が普通に王様やってるんですから神代恐るべし。

因みに父王「ルガルバンダ」は在位期間「1200年以上」らしいのでこの辺ツッコミ始めるとキリがありません。深く考えないようにしましょう、もしかするとシュメールジョークの可能性もあります。

300kgもの重武装てそれなにかの罰ゲームですか?

因みに全身金属製の所謂「プレートアーマー」でも標準40Kgくらいらしいので300Kgというとホントに純金製だった可能性も高いです。あの金ピカアーマーはどちらかというとハンディキャップだったのでは? あの英雄王なら十分ありえそうです、たぶんたまに裸になっているのもそのへんが理由なのかもしれません キャストオフ的ななにか?

人類最古の英雄譚「ギルガメシュ叙事詩」

ギルガメッシュを語る上で欠かせないのがその活躍を描いた英雄譚「ギルガメシュ叙事詩」の存在です。

  • メソポタミア神話の一つにも数えられる有名な物語。人類史において「最も古い叙事詩」ともされる。
  • オデュッセイアやアーサー王伝説などと並び称される世界的な英雄譚の一つ。

「最古の文学作品」とも称されるギルガメシュ叙事詩、ではそのあらすじを見ていきましょう。

ギルガメシュ叙事詩のあらすじ【1】<最強の王と最強の刺客>

  1. 遥か昔のメソポタミア、古代都市ウルクの王ギルガメッシュは神王ルガルバンダと女神の血を引き、シュメールの神々より祝福を受けた並ぶものなき英雄であったが、同時に民を苦しめる暴君でもあった。
  2. 増長するギルガメッシュを見かねたシュメールの神々は、彼と同等の力を持つ存在を創り、それによって彼の暴走を止めようと考える。そこで粘土に人の形、軍神の力、更に「エルキドゥ」という名を与え地上に放つ
  3. 神々の思惑通り、ギルガメッシュとエルキドゥはウルクにて激闘を繰り広げる
  4. しかし二人の力は拮抗、勝負はつかず。→互いの力を認め合うギルガメッシュとエルキドゥ
  5. 戦いの果ての抱擁、そして芽生える熱い友情

連載は少年ジャ○プでしたっけ?

オッス!オラ、ギルガメッシュ! エルキドゥとかいうスゲーつええヤツがオラと勝負しにやってきた! オラ、ワクワクすっぞ!

神の血というかむしろ戦闘民族の血を感じさせる逸話ですが、むしろ神代の時代から「昨日の敵は今日の友」というテンプレがすでに確立していた点が驚愕です。少年ジャン○が現代においても不動の人気を得ている理由がわかります、これはもう我々人類のDNAに深く刻まれたものなのでしょう。

あらすじ【2】<最強コンビの誕生とフンババの討伐>

  1. 友・エルキドゥを得たギルガメッシュから暴君としての影は次第に薄れ、またエルキドゥも豊かな人間性を得ていく。いつしか二人は雄々しきウルクの王とその最高の友として民に愛される存在となっていく。
  2. ある時、ギルガメッシュはレバノン杉の森に住む番人「フンババ(フワワ)」の討伐をエルキドゥに持ちかける。当初反対したエルキドゥであったが最後はギルガメッシュを守り抜くという誓いを固め、二人はフンババ討伐へと旅立つ。
  3. 「あらゆる悪」とも称される怪物「フンババ(フワワ)」、その圧倒的な力に抗うために互いを鼓舞するギルガメッシュとエルキドゥ、太陽神シャマシュの加護もあり、ついに二人はフンババ討伐に成功する。
  4. 貴重な杉をウルクへと持ち帰えることにも成功し、誇らしく凱旋するギルガメッシュ。
  5. しかしフンババは凶悪な怪物であると同時に、実は「神の使い」でもあった。それが後に二人の運命を大きく狂わせることになる。

「フンババ」ってこれに出てくる怪物だったんですね。名前のクセがすごいがどんな怪物かはよく知らない的モンスターナンバーワンではないでしょうか?

そのわりにシュメール読みだと「フワワ」となるらしく、途端に「ゆるふわ」系な名前になります。「フワワちゃんて名前の超かわいい子、今度紹介するねっ」とシュメール人の女友達にいわれた時には注意が必要です。

あらすじ【3】<女神イシュタルの恋と天の雄牛>

  1. フンババ討伐の偉業を成しウルクを凱旋するギルガメッシュ、その雄姿に一目惚れした「美と愛の女神イシュタル」は彼に結婚を迫る。
  2. しかしギルガメッシュはこれをあっさりと拒否、女神のプライドをズタズタにされたイシュタルは父アヌ神に泣きつき、半ば強引(ほぼ脅迫)に「天の雄牛グガランナ」を造らせ、ウルクへと送り込む。
  3. 突如、聖牛グガランナの強襲を受けるウルク、多くの被害を出しながらも、ギルガメッシュとエルキドゥはその迎撃に成功する。2度目の屈辱に激昂したイシュタルはギルガメッシュへ呪いの言葉を吐きつけるが、逆にそれに怒ったエルキドゥからグガランナの腿を投げつけられ顔面に直撃。さすがのイシュタルも半ベソで退散していった。
  4. ウルクは英雄王とその友の勝利を讃え、再び歓喜に包まれる。
  5. しかし話はこれで終わらなかった。神の使いたる「フンババ」そして「グガランナ」まで打ち倒してしまった二人の「罪」を神々は決して許そうとはしなかったのである。

でました、メソポタミアのトラブルメーカー「女神イシュタル」の登場です。

秒でフラれる美と愛の女神(笑)

フラれた腹いせに神造兵器をけしかけ都市国家一つ滅ぼそうとする女神

これでもメソポタミア神話ではダントツ人気者なので美人は約得ということでしょうか? しかし神の使いすら次々と撃退するギルガメッシュとエルキドゥ、まさに人類史上最古にして既に最強のコンビといえるかもです。

あらすじ【4】<永久の別れと死の影>

  1. 一度ならず二度までも「神の使い」を倒してしまったギルガメッシュとエルキドゥ、その暴挙を神々は許さなかった。神々は「二人のち一人が死なねばならない」とその運命を定める、つまりどちらかが神罰を受けねばならないと。
  2. そしてその運命を背負ったのは「エルキドゥ」であった。エンキドゥは死の運命によって病に倒れる。
  3. エルキドゥは12日間熱病に苦しみ、最期は「親友」ギルガメッシュに看取られ息を引き取った。
  4. 最愛の友の死をギルガメッシュは深く悲しんだ。エルキドゥの体が朽ちるまでその側を離れることはなかったという。
  5. 唯一無二の親友を失ったギルガメッシュの哀しみは癒えることはなく、それは次第に「死」という概念そのものへの恐怖へと変化していく。
  6. それまで恐れを知らぬ英雄であったギルガメッシュはいつしか「逃れられぬ死」の影に怯えるようになったのである。

あらすじ【5】<不老不死の探求と不死者の忠言>

  1. 「死」を恐れるようになったギルガメッシュはそれを克服するために「不老不死」を求める旅にでる。
  2. それは、かつて神より不死を与えられたという人物「ウトナピシュティム(ジウスドラ)」から不老不死の秘密を得るための旅であった。
  3. 長い旅路の果て、とある酒場の女将「シドゥリ」と出会い、不死を求めるのではなく今ある生を楽しむことを説かれるも旅を諦めることはなく、ついには彼女の計らいによってウトナピシュティムの住む島へとたどり着く。
  4. ウトナピシュティムとの出会いを果たすも、彼から語られたのは「神々に創られた者には必ず命の定めがある」という言葉だった。
  5. それでも諦めないギルガメッシュにウトナピシュティム(ジウスドラ)は自らが不死者となった経緯を語る。かつてエンリル神が人を滅ぼすために起こした大洪水を生き延びることのできたウトナピシュティム、それを讃えた神々の祝福によって彼とその妻は「不死を授かった」のだという。そしてギルガメッシュにも大洪水と同じ6日6晩の間眠らずにいる、という試練を課す。
  6. あっさり寝落ちするギルガメッシュ、チャレンジ失敗
  7. がっくり肩を落とし帰りの船に乗り込もうとするギルガメッシュ、それを哀れに思ったウトナピシュティムの妻の計らいで「若返りの植物」の存在を教えてもらうことになる。

ていうか、寝るんかい!

ギルガメッシュ英雄譚、この辺から急に英雄王のポンコツ側面が顕現し始めます。いや、炭治郎なら我慢したぞ、そこは! もしかするとギルガメッシュは長男じゃなくて次男だった可能性も浮上してきました

あらすじ【6】<若返りの植物と王の帰還>

  1. ウトナピシュティム(ジウスドラ)から「若返りの植物」の在り処を教えられたギルガメッシュ。早速その「若返りの植物」を手に入れることに成功する。
  2. 喜び勇んで帰路につくギルガメッシュ、しかしとある泉で水浴びをしている最中に、あろうことかこの「若返りの植物」をヘビに食べられてしまう、まさに慢心。
  3. 王、ガッカリ(´・ω・`) 
  4. 結局ギルガメッシュは不老不死の秘密も若返りの植物も得ることはできないままウルクへと帰還したのでありました。(終わり)

いや終わるんかーい!?

え? ちょっ? お、王? どうした(笑) あっさり寝落ちでチャレンジ失敗あたりからなんだか雲行きは怪しかったですが、完全に慢心王全開じゃないですか?

ホントにギルガメッシュ叙事詩はこれにて終了です。一応、帰還したギルガメッシュは冒険で得た知識や経験を活かし、その後偉大な王となってウルクを治めました、めでたしめでたし、という流れらしいですが、「英雄譚」としてはフンババ討伐あたりがピークだったという感は否めないでしょう。

しかしまあ、実際、人生なんかそんなものですよ(笑)

この妙に「人間臭いところ」もまたギルガメッシュの魅力でもあります。変に出来すぎたご都合主義的な英雄譚でもなく、破滅の末路を辿る悲劇でもなく、実に「人間味溢れる逸話」ともいえます。

このへんもまたギルガメッシュの魅力の一つであり、「ギルガメッシュは実在したかも?」という説を大きく後押しする原動力にもなっているのかもしれません。