織田信長の名乗った「第六天魔王」って何者?|考察レポ

FGOでノッブこと織田信長が名乗る「第六天魔王」というフレーズ。なんとも中二心をくすぐる響きと字面ですが・・・ そもそも一体何者なのか?

ということで、今回はこの「第六天魔王」に関する考察レポートです。

「第六」てことは「第一から第五」もいる?

仮に「第六・天魔王」と考えると、つまり「第六の天魔王」ということになりそうですね。ということは「第一~第五の天魔王さん」がいるということになるはず。

「フフフ、例え儂が倒れても、第一、第二、第三、第四、第五の天魔王が・・・っ! 是非もないね!」

とかなるとそれはそれでメンドクサソウ大変そうです。

じゃあ、とりあえず第一は誰かなーと調べて見ると、なぜか「六欲天」という言葉に辿り着く。そしてこれがいわゆる「仏教用語」であることがわかる。

え!? もしかして「第一から第五の天魔王さん」など存在しない!? 

で、更に調べてみると中々ややこしい話であることがわかる。なのでざっくりいきます!

仏教世界での「六欲天」とは?

「六道」、つまり 地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・人間界・天上界 という仏教における6つの世界観はご存知の方も多いはず。

このうち、地獄界~人間界までの5つの世界はまだまだ欲に塗れた世界、所謂”俗世”ですが、最後の「天上界」は別格で欲望を超越した悟りに至った者の世界なわけです。

しかしその「天上界」の中にも実はランクがあり、同じ天上界でも下から数えて6ランク目まではまだまだ欲に囚われた俗な世界=俗世の一部とされている、・・・これがつまり「六欲天」なのである。

「六欲天」の”天”はエリア(?)的なものを表し、天上界の中でも地獄界~人間界に近い「6つのエリア」というイメージが一番しっくり来る。逆に天上界でありながら本当の意味での天上界とはいえない特異なエリアともいえる。

そしてこの「六欲天」に置ける最高位、下から数えて6番目の”天”こそが「第六天」となるわけだ。

つまり「第六天魔王」とは、「第六の天魔王」ではなく、「第六天の魔王」というのが正しい認識となる。

欲界の支配者、その名は「第六天魔王波旬」

仏教世界において「六道」は有名ですが、もう一つの世界分けの概念に「三界」というものがある。

これは「欲界」「色界」「無色界」の3つの世界で、このうち「色界」は淫欲と食欲の2つの欲から解き放たれた者が住まう世界、「無色界」に至っては物質すら存在しない高次の精神世界。いずれも悟りに至った者の世界である。

それに対して「欲界」は欲に囚われた世界、所謂「俗世」である。地獄~餓鬼~畜生~修羅~人間界、更に上記の「六欲天」という天上界の一部までを含む、まさに「地下と地上、更に天の一部」にまで連なる広大な世界で、我々人間が存在する世界もまた「欲界」のうちに含まれる。

世界が「欲界」→「色界」→「無色界」という順番でランク付けされるとするならば、「欲界」の最高位は天上界に存在する「六欲天」ということになる。そしてその「六欲天」の更に最高位が「第六天」。・・・つまり、この「第六天」を制するものこそ、この「欲界」という俗世における「最高位の存在」といえるわけだ。

この「欲界」の支配者とも呼べる存在こそが、かの「第六天魔王波旬」なのである! ふー、長かった・・・(笑

「天魔」という存在について

「天魔」というと、メガテンでは種族名だったりしますが、本来の「天魔」とはこの「第六天魔王波旬」そのものを指します。「魔」「魔王」と呼ばれるだけあって、仏道修行を妨げる邪悪な存在であるとされ、そもそも「波旬(はじゅん)」という言葉自体がサンスクリット語で「より邪悪なもの」という意味を持ちます。

第六天魔王=「天の反逆者」にして「この世の覇者」

以上のように「第六天」とは「天上界にありながら欲望を捨てきれぬ者たちの世界」という側面を持つ。その「負のイメージ」が第六天の主に対して「天魔」「魔王」という邪悪なイメージを与えたものと推測する。

実際、第六天魔王は時に煩悩の化身である魔神「マーラ」とも結び付けられる。マーラは仏道修行を妨げる障害そのものであり、お釈迦様の敵対者でもある。

つまり、天に在りながら天に背くもの、「天の反逆者」、それが「第六天魔王」なのである。

同時に、第六天魔王は我々がいる人間界も属する「欲界」における最高位の存在でもある。それは「=人間界の支配者」としての意味も持つ、ざっくりといえば第六天魔王とは「欲界」という広大な世界の王、つまり「この世の覇者」としての側面も持ち併せることになる。

そんな「天の反逆者」「この世の覇者」としてのイメージから、歴史上の偉人の中には「第六天魔王」と称されたり、または自称する人物もいたということですね。

その中で一番有名なのが「織田信長」であり、自らを『第六天魔王信長』と名乗ったといわれています。自ら「天魔王」と名乗るとは・・・、さすがノッブ、中二力が高いある意味メンタルの強さも魔王級である。

余談

因みに、史実において、織田信長が自らを「第六天魔王信長」と名乗ったという逸話は、かの武田信玄が織田信長に送った手紙に「天台座主沙門信玄」という署名があり、これが「天台宗(仏教)の代表者・信玄」という意味があったため、

「ぐぬぬ、信玄め、自らを神仏の代表と名乗るとは小癪な! ならば儂は仏門の敵、”魔王”信長じゃ! はっはっはっ! 是非もないね!!」

というくらいのノリで「第六天魔王信長より」と返信に署名したことが発端とされている。ノッブらしいといえばノッブらしいエピソードですが、実際に比叡山延暦寺を焼き討ちしてたりもするのであながち間違いではない点は信長らしいといえば信長らしい。

因みに因みに、かの「鈴鹿御前」が「第四天魔王の娘」との話もあるが、おそらく第六天魔王との勘違いではないかという説が有力。そもそも第四天は「兜率天(とそつてん)」とも呼ばれ、弥勒菩薩にもゆかりのある比較的穏やかな世界観であり、実際、魔王絡みの逸話は見つけられなかった。